コンプライアンス対応の戦略的ポイント

コンプライアンス対応の戦略的ポイント
目次

はじめに

近年、企業におけるコンプライアンスの重要性が急速に高まっています。コンプライアンスは、企業が法律や規則、社内規定を遵守することを指し、企業の信頼性を維持し、長期的な成功を支える重要な要素となっています。

しかし、複雑かつ多岐にわたるコンプライアンスへの対応は決して容易ではありません。多くの企業が、知らず知らずのうちに潜在的なリスクに直面しているのが現状です。

本稿では、こうしたコンプライアンスリスクから企業を守り、さらに競争優位性を確立するための、重要なポイントについて詳しく解説していきます。


コンプライアンスへの対応が企業にとって重要な理由

国内外で、企業に課せられる法規制は年々厳格化の一途を辿っています。コンプライアンス違反の問題が発覚すると、企業は監督省庁から営業停止等の重い処分を受ける可能性があります。処分を受けると企業の評判や顧客との信頼関係を損ねるのみならず、最悪の場合企業の倒産にまで発展する可能性もあります。したがって、企業の存続のためには、予めリスクを解消しておくことが不可欠です。

一方で、コンプライアンスはリスク回避のためだけの守りの姿勢ではありません。積極的にコンプライアンスに取り組む企業は、透明性が高く、社会から信頼される企業として評価されます。これは、投資家からの評価を高め、優秀な人材の確保につながり、さらには顧客からの支持を得るための強力な競争優位性となります。

つまり、コンプライアンスは企業の持続的な成長と企業価値向上の原動力となり得るのです。

コンプライアンスリスクに対する5つの戦略的ポイント

企業がコンプライアンスリスクに効果的に対応するためのポイントを以下に示します。

①経営陣の主導によるコンプライアンス文化の醸成と全社的意識の向上

効果的なコンプライアンス体制の基盤は、健全なコンプライアンス文化であり、その醸成には経営陣のリーダーシップが不可欠です。

  1. 経営トップの明確なコミットメントの表明
    経営トップがコンプライアンスを最優先課題と位置づけ、社内外に発信することが出発点です。
  2. 継続的な啓発活動の実施
    コンプライアンス違反事例の影響を具体的に周知することが全社的なコンプライアンス意識の向上につながります。

②リスク評価と優先順位付けの実施

自社のコンプライアンスリスクを正確に把握し、優先順位をつけて対応策を講じる必要があります。具体的には以下のステップで対応します。


  1. 定期的かつ網羅的なコンプライアンスリスクの特定
    法令違反、社内ルール違反、契約違反、社会的責任等などの多岐にわたるリスクを特定します。
  2. リスクの重要度評価と優先順位付け
    「発生可能性」と「発生した場合の影響度」の2軸でリスクを評価し、対応の優先順位を決定します。

③実効性のある内部監査体制の構築

優先度高と認めたリスクに対して内部監査を実施し、問題の顕在化を防止する必要があります。具体的には、以下のステップで対応します。

  1. 内部監査部門の設置
    内部監査専門の部門やコンプライアンス委員会など、内部監査を主体的に実行する部門を設置します。
  2. 内部監査計画の策定
    高リスク領域に焦点を当てた内部監査計画を立案します。
  3. 定期的な内部監査の実施
    計画に基づいて定期的に内部監査を実施し、問題点を早期に発見します。
  4. 内部監査結果のフォローアップ
    発見された問題点に対して改善策を実施し、効果を確認します。

④適切な業務プロセスの策定

内部監査で重要と評価されたリスクに対して、顕在化を防ぐための業務プロセスの策定が必要です。その際、以下のポイントがあります。

  1. 課題・内部監査背景の可視化
    内部監査の対象となる事象には、それを引き起こす背景が必ず存在します。したがって、業務プロセス策定を始める前に背景を可視化し、真に解決すべき課題を明確にする必要があります。
  2. 業務プロセスの段階的な展開範囲の拡大
    リスクの顕在化を完璧に防ぐ業務プロセスを一遍に策定するのは容易ではなく、業務プロセスの初版は通常何らかの課題・欠陥を内包しています。そのため、まずは展開範囲を一部の部署などに限定して試験的に業務プロセスを運用し、浮き彫りとなる課題・欠陥を解消してから徐々に展開範囲を拡大することが肝要です。
  3. 現場業務における実現可能性の考慮
    現場担当者に対しあまりに高負荷・高難易度の運用を要求すると現場業務の疲弊・混乱を招くため、現場業務における業務プロセス運用の実現可能性の考慮が必要です。
  4. システム対応
    業務プロセス策定と並行して、業務で使用するシステムでコンプライアンス違反につながる操作ができないよう改修を行う必要があります。

⑤コンプライアンス教育の実施

従業員一人ひとりが企業コンプライアンスの重要性を理解したうえで行動するよう教育し、コンプライアンスリスクへの予防することが重要です。具体的には、以下の教育プログラムが考えられます。

  1. 定期的なトレーニング
    全従業員を対象とした定期的なコンプライアンス研修の開催、および理解度チェックを行います。
  2. ケーススタディの活用
    実際の違反事例を用いたディスカッションやロールプレイングの実施。
  3. 部門別の専門教育
    各部門の特性に応じた、より専門的・具体的な教育の実施。


 これらの対応策を実施することで、企業はリスクを大幅に軽減し、コンプライアンス体制を強化することができます。

おわりに

コンプライアンスの遵守は、単なる法令順守にとどまらず、企業の評判の保護、ステークホルダーとの信頼関係の構築、そしてビジネスの持続可能性の確保、競争優位性の確立につながる重要な戦略的投資と言えるでしょう。

しかし、複雑に変化する現代の規制環境の中で、効果的なコンプライアンス体制を自社だけで構築するのは容易ではありません。

私たちStrategy Innovation Groupは、コンプライアンスの専門的知見を活かし、コンプライアンスの観点を踏まえた業務プロセス策定や組織体制構築まで支援します。現在抱えている業務・組織上の課題を明確にし、コンプライアンスを基盤とした「あるべき姿」を描き、その実現までを一貫して伴走支援いたします。

ぜひ一度Strategy Innovation Groupにご相談ください。


 

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